現実も、情熱的に自分らしく生きたからといって何もかも上手くいくわけではありませんし、幸せになれるかも分かりません。
ときには、はやる気持ちを抑えて慎重かつ謙虚に振舞うことも、大きな目的を達成するためには重要です。
そういったバランス感覚をまだ知ることのない少年たちの危うさが、チャーリーの失敗とニールの自殺という二つの悲劇に現れています。
厳格な学校教育に屈し、自分を殺してしまっては、本当に幸福な人生を楽しめる可能性はゼロになる。
けれども、自分を生かそうとしても、失敗することだってある。
挑戦しなければ幸せになれる確率はゼロだけど、上手く挑戦しなければ、その挑戦だって上手くいかない。
そんな人生の現実的悲哀が描かれている点こそ、多くの人々が本作に心打たれるゆえんなのでしょう。
そして、なんといっても感動的なのはラストシーン。
学校側の圧力によって辞職を余儀なくされ、キーティングが教室から去っていく場面です。
そのとき、「死せる詩人の会」に参加した者たちの中で最も内気だったトッド・アンダーソンが自分の机の上に立つのです。
とても自分の殻を破れそうになかった少年が、型破りな方法で去り行く名教師を送り出す。
最高の閉幕に涙しない人はいないと思います。
また、キーティングが学校去ってしまうきっかけになったのが、「死せる詩人の会」に参加していた優等生リチャード・キャメロンが裏切って学校側に「死せる詩人の会」の存在を密告したから、という展開も現実をよく表現していてそそります。
情熱的に生きてみたって失敗することもあるし、裏切りに遭うことだってある。
それでも、情熱的に生きてみることが大事なんだ。
なぜなら、結果的に「成功」するか「失敗」するかではなく、情熱的に生きたことそのもの、「いまを生きる」を行い続けたことそのものが人生の満足に繋がるのだから。
敢えて失敗や裏切りまでもを物語に内包することで、そういったメッセージを効果的に発しています。
中学生や高校生の自分に見せてあげたい作品であり、こういった作品こそ「義務教育で見せるべき」なのだろうと思わせられる作品です。
ここまでべた褒めいたしましたが、それでも評価5点ではなく4点なのは、「敵」の作り込みが少し弱いかなと感じたから。
規律ばかりを重視して進学実績に拘泥する高校、医者や弁護士への道を子供に強制させる両親。
これらを何の捻りもなく純粋な「悪役」として登場させるのは、さすがに現代社会から見れば古いかなと感じてしまいます。
生徒たちやキーティングから見れば「悪役」となっている、学校側の人間や生徒の親と言った登場人物。
彼らに対しても、何か彼らがそのような人間にしてしまったのかという内幕が分かるようなドラマがあれば、最高点数の5点をつけられたでしょう。
それでも、素晴らしい名作であることには違いありません。
是非、鑑賞してみてください。
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